2016年05月09日

相続時精算課税贈与を選択した方の、相続税申告!!

平成15年から始まった贈与税上の大きな特例である「相続時精算課税贈与(相法21の9)」ですが、最近の相続税申告やご相談のお客様で過去にこの特例の選択をされている方がかなり増えてきたと実感しております。

そして、皆様口々に相続税の計算にこの贈与が大きく影響することをご存じじゃなかったとおっしゃりますので、改めてこの制度の概要とその相続税申告への影響についてお話をしたいと思います。


◇贈与時の概要

下記の適用要件を満たした場合の贈与については、特別控除額(2,500万円)までは贈与時の贈与税は無税となり、特別控除を超えた部分に関しては、一律20%の贈与税を支払う必要があります。

≪適用要件≫ 

○贈与者:原則として60歳以上の父母又は祖父母

○受贈者:20歳以上の推定相続人である子又は孫

○申告要件:有り(贈与を受けた年の翌年の2月1日から3月15日の間)

○添付書類:戸籍謄本・戸籍の付票・相続時精算課税選択届出書など(選択初年のみでOKです。)

※注意点※

ひとたびこの制度を選択(同じ贈与者ごと)してしまうと、以後の贈与は通常の贈与税の基礎控除110万円以下の贈与であっても贈与税が課税(20%にて)されることになります。

つまり通常の贈与形式(暦年贈与)には戻れません!!

また、特別控除の適用は期限内申告が要件ですので、選択すればその後は何もしなくても(つまり申告をしなくても)合計2500万円までは課税されないということではなく、贈与があった年ごとに期限内申告をする必要があります。


◇相続時の概要

上記の贈与者がお亡くなりになった場合には、その方の相続開始時の遺産に上記の贈与財産額(贈与時の時価)を加算して相続税の計算をします。

また先に贈与時に支払った贈与税額がある場合は、相続税からその分を控除することができます。(控除しきれない場合は還付も受けることができます。)

※注意点※

上記の贈与を受けている者は、たとえ相続時の財産を受け取っていなくても相続税計算の壇上に上がることになります。

裏を返すと、相続財産を受けた相続人は他の相続人が、過去に贈与を受けていないか・相続時精算課税贈与の選択はしていないかということを知っていなくては正しい相続税計算はできないということにもなります。

また相続時精算課税贈与財産が多額であることにより、相続税の総額が大きくなり他の相続人の相続税負担も増えるということはよくあります。


〜まとめ〜

両親や祖父母の財産を生前に若い世代に渡して活用をすることを目的として制定され、実際に多くの方がこの制度を使って生前贈与を行っていますが、一部では非課税だという勘違いや間違った営業文句を鵜呑みにしている方も多く、生前の多額な贈与が相続の際の新たな火種となることもありますので、事前に税理士へ適用の有効性や危険性をしっかりと相談することをお勧めいたします。

posted by すぎうら税理士事務所 at 10:11| Comment(0) | 税理士業務備忘録
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